クリスマスの夜に天使が告げた喜びを、そのまま歌に封じ込めた讃美歌

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讃美歌106番「グローリア」─天使の賛美が今も灯す“栄光と平和”の物語

クリスマスの夜に天使が告げた喜びを、そのまま歌に封じ込めた讃美歌

クリスマスの礼拝で「グローリア」を歌うとき、胸の奥がふっと明るくなります。
ラテン語のたった一行
――Gloria in excelsis Deo.(いと高きところに神に栄光。)――に、
天の大広間がひらくからです。
この賛美は、家畜小屋の情景を超えて、
十字架と復活に至る一本の福音を、私たちの“今日”へ運び直してくれます。

1)天使の賛美「Gloria」に宿る福音の核心

ルカの福音書にこうあります。
「御使いは彼らに言った。『恐れることはありません。見なさい。わたしは、すべての民に与えられる大きな喜びを、あなたがたに告げ知らせます。きょうダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになりました。この方こそ主キリストです。』」(ルカ2:10–11、新改訳第3版)
そして、天の軍勢が重ねます。
いと高き所では、神に栄光があるように。
地の上では、御心にかなう人々に平和があるように。」(ルカ2:14)
栄光は神へ、平和は(御心にかなう)人へ。
この二本柱こそ、グローリアの心臓部です。
生まれた御子は、やがて
十字架で私たちの罪の身代わりとして死に、
三日目によみがえられ(第一コリント15:3–4)、
そして
永遠のいのちを信じる者に与えられます(ヨハネ3:16)。
だから、
人は神と和解し、平和に入れられるのです。
こうして、私たちは、信仰によって義と認められたので、私たちの主イエス・キリストによって、神との平和を持っているのです。」(ローマ5:1)

2)羊飼いから始まる──“届くべき人”に届く良い知らせ

天使は、王宮でも神学者の集まる所でもなく、
野の羊飼いに現れました。
夜の仕事、荒れ地の風、名もなき生活。
神の救いは、社会の中心から外れたような、あまり人から顧みられない名もなき人達からまっさきに始まります。
この順序は、いまも変わりません。
だれでも、主の御名を呼ぶ者は救われる。」(ローマ10:13)
“だれでも”に、あなたの名も入っています。
グローリアを歌うとき、私たちは“届くべき人”の名簿に自分を見つけます。

3)生い立ちと広がり──素朴なキャロルが世界の礼拝へ

この賛美の源流は、フランスの民衆キャロル「Les Anges dans nos campagnes(野のはらに天使)」
村の礼拝や家庭の囲炉裏端で、羊飼いの物語が口伝えに歌われました。
19世紀、英国の司教ジェームズ・チャドウィックが英詩「Angels we have heard on high」として広め、世界中に受け入れられていきました。
リフレインはラテン語のまま。
Gloria in excelsis Deo. (グローリア イン エクシェル ディオ)
直訳いと高きところに、神に栄光。
英詩の一節はこう始まります。
Angels we have heard on high, sweetly singing o’er the plains.
直訳:私たちは天使たちを聞いた。平原の上で、甘やかに歌っているのを。
日本の教会では、「天には栄え」などの訳で親しまれ、讃美歌106番として定着しました。
素朴さ(野のうた)と壮麗さ(天の合唱)が一本に束ねられた、稀有な賛美です。

4)音楽が語る神学──“Glo—ri—a”の長い息

グローリア特有のメリスマ(同じ音節を長く伸ばす歌い方)は、ただの技巧ではありません。
人の息(spirit)を使って、神の栄光(gloria)を高く掲げる、身体的な礼拝です。 長く伸ばす間、私たちは思い煩いを吐き出し、心を上へ向ける。
あなたがたの思い煩いを、いっさい神にゆだねなさい。神があなたがたのことを心配してくださるからです。」(第一ペテロ5:7)
声が尽きるところで、恵みが満ちてくるのです。

5)“クリスマスで終わらない”グローリア

グローリアはクリスマスという季節の歌にとどまりません。
誕生十字架へ、そして復活へと直線でつながっていきます。
「神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに、世を愛された。
それは御子を信じる者が、一人として滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。」(ヨハネ3:16)
葬儀の席、病床の枕元、クリスマスの時期以外にでも、グローリアは歌えます。
なぜなら、歌の中心が「神に栄光(変わらない真理)」と「人に平和(変わらない約束)」だからです。
状況の晴れ間ではなく、キリストそのものが平和だからです。

6)グローリアのエピソード①──消灯後の病室で

ある教会の青年が、入院中のクリスチャンである母にスマホで礼拝の配信を見せていました。
病室は夜の消灯時間になりました。
画面の向こうから、会衆賛美のグローリアが流れます。
青年はイヤホンをつないで、片方を母に、もう片方を自分に付けました。
Gloria in excelsis Deo」のロングトーン。
「グロ~~~~~~~~~~リア ・・・」と。
歌い終わる前に、母の目尻に光が溜まりました。
「死が少しだけ怖かたけど、もう怖くないわ。
だってわたしはこれから素晴らしい天に行くんだから。
そして、『イエス様がわたしの罪のために十字架で死に甦るために』この地上に来てくださり、事実十字架で尊いいのちをささげて私の身代わりに死んでくださったのだから、もう私は怖いのではなく天が楽しみだわ」って、 彼女は静かに笑顔で言いました。
彼女の痛みも状態もまったく変わってはいません。
でも、
“神に栄光”が先に置かれたとき、心には平和が落ちてきたのです。
後日、青年の母は地上の旅路を終えました。
そして天に召された母の召天式でも、青年は母に確信を与えたのと同じ賛美歌106番を多くの人たちと共に歌いました。

7)グローリアのエピソード②──仮設住宅のクリスマス

東日本大震災後の仮設住宅でのこと・・・
2011年3月11日宮城県沖を震源とするマグニチュード9.0の地震と、
それに伴う巨大津波によって東北から関東にかけて甚大な被害が発生しました。
日本の観測史上最大の地震震災後9カ月ぐらい経過したクリスマスの時、
ある仮設住宅で「小さな集会」が開かれました。
最初は空気がぎこちなく、言葉も続きませんでした。
やがてろうそくが灯り、集会をすすめていた一人の青年が言いました。
みなさんと一緒に歌ってもいいですか。」と。
そして その人が歌い始めると、二人、三人と声が重なり多くの人の声がひとつになりました。
Glo——ri——a・・・(グロ~~~~~~~~~~リア ・・・)
涙をながして泣いている人、目を閉じて聴いている人、黙って聴く人、嬉しそうに賛美している人、それぞれがじっくり自分の人生を振り返りながら聞き入っているかのようでした。
歌い終わると、一人のクリスチャンの青年が聖書からメッセージを語りだしました。
「クリスマスの本当の意味」を語ったのです。
神の御子イエスキリストがこの地上に来てくださった本当の目的と見返りを求めない愛、
そして十字架と復活、
そして羊飼いたち聞いた福音(良きおとずれ=グッドニュース)を語りました。
そして多くの人々がこの羊飼いがきいた福音(良きおとずれ=グッドニュース)を自分のこととして信じ受け入れました。
そして、そのなかの一人がいいました。
「イエスキリストが今ここに来てくださったような気持ちになった。」と。
状況や環境は変わらなくても、
神に栄光をささげると、地に平和が降りてくるのです。
その晩、支援物資の列ではなく、祈りの輪に並ぶ人が多くいました。
本当のクリスマスがもたらすものは?
【 栄光は神へ。
(神との)平和は(御心にかなう=福音を信じた)人(わたし)に 】 です。

8)今日に生きる三つの実践──栄光は神へ、平和は人へ

① 栄光を神に返す練習をする。

良いことが起きたら、「うまくいった」ではなく「主に栄光」と口に出します。
小さな言い換えが、心の向きを整えます。

② 思い煩いを主に委ねる。

寝る前に、紙に一行ずつ不安を書いて、「主にお任せします」と祈って差し出します。
“上に向けて吐く(祈り)”のが、信仰の呼吸です
あなたがたの思い煩いを、いっさい神にゆだねなさい。神があなたがたのことを心配してくださるからです。第一ペテロ5:7)。
そして“神様の御言葉”から吸う(約束や立場を受け取る)のです
生まれたばかりの乳飲み子のように、純粋な、みことばの乳を慕い求めなさい。それによって成長し、(罪の惑わしからの)救いを得るためです。第一ペテロ2:2

③ 証しに一歩踏み出す。

羊飼いのように、見聞きしたことを、だれか一人に話してみます(ルカ2:17)。
「グローリアを歌って、心が軽くなったんだ。」 それで十分なんです。
まず一歩踏み出しましょう。
証しは説教ではなく、今日のあなただけの短い物語です。
※もし話しをすることができないなら、ひとりの人のためにひとつのことでいいです。
その人のために祈りましょう。

9)“原語の味”を少しだけ

Gloria in excelsis Deo.
いと高きところに、神に栄光。
Et in terra pax hominibus bonae voluntatis.
地の上に、御心にかなう人々に平和。
Angels we have heard on high, sweetly singing o’er the plains.
私たちは天使たちを聞いた。平原の上で、甘やかに歌っているのを。
Come to Bethlehem and see Him whose birth the angels sing.
ベツレヘムに来て見よ。天使たちがその誕生を歌うお方を。
メロディの長い“Glo—ri—a”は、言葉を超える賛美です。
言葉が尽きるところで、礼拝が始まるのかもしれません。

10)福音の核心を、いまもう一度

神の御子は、
私の罪の刑罰の身代わりとして十字架で死に、
三日目によみがえられました。
これを信じる信仰によって、
人は罪赦され、滅びから救われ、
永遠のいのちの約束にあずかります
ヨハネ3:16、第一コリント15:3–4、ローマ5:1)。
この救いは、能力や功績ではなく、恵みによる賜物です。
だから、だれでも受け取れます。
小さな祈りの例
「尊き父なる神さま。
私は自分自身の神様に対する罪を悔い改めます。
そして
あなたが私のその罪のために十字架で死に、
三日目に甦って下さったことを信じます。
わたしのこの信仰によって神様が私の罪を赦してくださったことを感謝します。
どうかもっともっと、あなたの素晴らしい愛と恵みで満たしてください。
神様あなたに栄光がありますように。
イエスキリストの御名によってお祈りします。アーメン。」

11)結び──あなたの“今日”に鳴り響くグローリア

礼拝堂でも、自宅でも、仕事場の休憩室でも。
そっと口ずさんでみてください。
Gloria in excelsis Deo.「グロ~~~~~~~~~~リア・・・」
いと高きところに、神に栄光。
栄光は神へ。平和は、あなたへ。
天使が告げたその一本の道は、いまこの瞬間も“あなたの今日”へと伸びています。
どうか、その平和があなたの心に、家族に、街に、静かに広がりますように。
本当のクリスマスがもたらすものは?
栄光は神へ。(神との)平和は人(わたし) 】 です。
栄光は神へ
(神との)平和は(御心にかなう=福音を信じた)(わたし) 】 です。

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