聖歌229番 『驚くばかりの』 原詩の直訳の歌詞です。
驚くべき主の恵みよ、その響きのなんという甘美!
わたしのようなみじめな者をさえ救われました!
かって見捨てられていた私はいま神に見出され
私の目は見えなかったのに今は見えています!
しかもその恐れを取り除いてくださった
なんという恵みのとうとさ
私がはじめて主を信じたその瞬間の。
私はすでにくぐり抜けてきました。
ここまで無事に導いてくださった主の恵み
その恵みがきっと私を天の故郷まで導くでしょう。
主は私に良きことを約束されました。
みことばこそ私の確かな希望。
主こそわが盾、私の分
私が生きる限り。
まことに、この身と心が衰えて
地上の生の終わるときにも
私は天の幕屋のうちに
喜びと平安を手にするでしょう。
ジョン・ニュートンの詩です。彼は、有名なアメージンググレースの作詞者です。
彼は、イギリスで奴隷を売買する奴隷船の船長をしていました。
彼は荒くれ者で、奴隷に対しても冷酷な扱いをしていました。
しかし、ある日の航海で大変な嵐に遭遇し、死に直面して初めて、
「神様、助けてください」と叫んだのです。
神は彼をあわれんで、彼の命を奇跡的に救ってくださいました。
「どうして、私が。」
そのとき、彼はその嵐が神の与えてくださった試練と守りであったと確信し、7歳の時に亡くなった母親が残してくれていた聖書を読み始め、イエスキリストを、自分の罪のために十字架で死に甦った救い主と信じました。
そして、クリスチャンとなって全く別の人生を歩みだしたのです。
23歳のときでした。彼は悔い改め、一転して奴隷を人として親切に接するようになったばかりか、さらに船を降りて、神様にお仕えするようになったのです。
そんな彼が、「こんな愚かな、どうしようもない者をも神は救ってくださった」という『おどろくばかりの恵み(アメージンググレース)』をこころから歌ったのが、この讃美歌です。
彼は、やがて神学校で学び、教会の牧師となり、多くの讃美歌を書き、死ぬまでこの「神のくすしき恵み」を語り続けました。
この曲は、かっての彼がひどい仕打ちをしていた奴隷たちの間でも、黒人霊歌として受け入れられ、奴隷制度廃止の働きの一つの種となっていきました。
一人の迫害する側の真の悔い改めは、しいたげられている人々の心にも、神のゆるしの深さとともに、響きわたっていったのです。
その「恵み」は、教会に満ちあふれ、それにとどまらずにあふれだし、エルビスプレスリーが歌ってグラミー賞を受賞し、一躍、世界の人々にも愛され、さまざまな思いをこめて歌われるようになったのです。
「こんな自分のような者までも救ってくださる、その神の恵み」に、ただおどろくばかりです。